仁科三湖のひとつ中綱湖に伝わる伝説

仁科三湖の真ん中の湖、中綱湖に伝わる伝承

仁科三湖で一番小いさな湖である中綱湖。

ここにも昔より伝わる伝承があります。

『中綱湖の主は鐘である事』

中綱湖(平村)は周圍二十丁町足らずの小さな池である。
昔池畔に十國寺といふ寺があつた。
それが或年の大地震で地崩れのため池の中に沒してしまつた。
此の寺には大きな鐘があつたが、
それも一緒に水中に沒してしまつた。

其後この鐘をつり上げんとして骨折つたが、
上り際になつて天が曇り大雨になつていつも駄目であつた。
そしてそれを釣り上げようとした
人の家には必ず祟りがあつた。

信府統記の安曇舊俗傅には
森村(平村)の九郎衞門とかいう者は
水泳に巧みで湖底へいつて
いつもこの鐘に觸れることが
出來た話しを載せてある。
今でも天氣の變り目にはゴーンゴーンといふ
音が靜かに聞えるといふ。
晴天の日には舟に乘って池上に出ると
黄金色をした鐘が湖底にはつきり見え、
寺と共に沒した大木も
薄黒く見えるとも云はれてゐる。

或年の夏雨が少しも降らなかつた。
百姓は憂ひに沈むばかりであつた。
或る晩村の正直者の枕邊に老人が現はれて
雨を降らせる術を教へて去つた。

正直者は納屋から細い紐をだして
湖畔の寺の半鐘と例の湖底の鐘とを
結びつけることに成功した。

忽ち車軸を流すやうな雨になつた。
夜が明けてに紐を解いたら
雨はすつかり止んだ。(西澤要市、武居由美子)

信濃教育会 北安部会編
『北安曇郡郷土誌稿、口碑伝説篇』第1連号第1冊による

中綱湖は周囲2キロほどの小さな湖です。
池といってもおかしくないくらいです。
しかし水深は平均6mちかくあり
最深で12mもあります。
鐘も簡単には見つからない深さでしょうね。
十国寺というお寺はいつ頃あったのか定かではありませんが
私が子供の頃にはハイキングコースに
その名前が残っていました。

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